マッケイ製法の靴はなぜ「オールソールできない」と言われるのか

革靴の製法紹介で耳にする「マッケイ製法はオールソール修理に不向き」という論調。
概ね事実ですが、マッケイ製法といってもピンからキリまであります。
よい素材をよい仕立てで組めば下手なハンドソーンやグッドイヤーより長持ちする銘品も世にはたくさんあります(最近は少なくなってきてるかも…)。
マッケイはシンプルな作りゆえに、廉価な量産品に採用されやすく、それらは当然積んでる材料もショボいのですぐに潰れてしまいます。
ただしこれは「そもそもの企画設計のグレード(価格帯)が低い」だけであり、「マッケイ製法がショボい」のではないのです。
それを前提として、「それでもマッケイはオールソールに不向き」な理由を考えていきましょう。
マッケイ製法とは
そもそもマッケイ製法とは、
①アッパー&ライニング
②中底
③アウトソール
これら靴を構成する主要パーツを貫通で縫い付ける構造です。
オールソールとは一般的に③を貼り替える修理内容を指します。
全て貫通で縫うマッケイ製法の場合、③を交換するたびに①と②にも再度縫い込み(ダシぬいと呼ぶ)をかける必要があります。
ハンドソーンやグッドイヤーの場合は
①アッパー&ライニング
②中底
③ウェルト
④アウトソール
この構成になっていて、針穴は③のウェルトにのみ蓄積されていくので①と②には針穴が増えません。
しかも③ウェルトは何度でも交換可能です。
ウェルトを搭載していることで整備性を向上させているわけです。そのかわりマッケイに比べてコストや重量、デザイン制約が増えてしまうという側面もあります。
針穴が増えるとどうなるのか
ダシ縫いを繰り返すとアッパーや中底に針穴が増えます。
すると切手の切り取り線のように穴同士が割れてきてしまい、靴として必要な強度が維持できなくなります。
さらにダシ縫いと併用して底付け用接着剤を効かせるためにバフィング(ヤスリがけ)を行うのですが、アッパーを削る作業でさらにアッパーは薄くなってしまいます。
結果オールソールを繰り返すたびに負荷が蓄積し、やがて寿命を迎えるのです。
では修理ではどうすればいいのか
今回のご依頼は
「気に入って履いていたが歩くと音が鳴るようになってしまった。他店でソール張り替えを頼んで一時的に解消したが、再び音が鳴るので直してほしい」
といった内容。

音なりは内部の接着剤が効いてない場合に発生することが多いので、内部にアクセスするためオールソールにて承りました。
内部をチェックしてみると、結構ボロボロでした。



中底は経年劣化と針穴で崩壊し、カリカリになっていました。
不安定な状態では音なりリスクも上がりますし、何より強度が出ません。
このまま組み直せばまた同じことの繰り返しになってしますので、中底はしっかりしたレザーで作り直します。
しなやかな履き心地と汗の吸い込みもよいので、修理というよりむしろアップグレードと言えます。

アッパーの方も製造時や修理時のバフィングやダシ縫いによって一部欠損が出ています。
パンク破れしている部分には補強材を当てて繋ぎます。


ここまでくればあとは通常通り組み立てていきます。

押縁というパーツでソールのアウトラインを作り、その後レザーソールとヒールパーツを制作します。
完成はこちら








・レザーソール(押縁交換)
・革積み上げ
・VIBRAM5350トップリフト
・VIBRAMアルペハーフラバー
・中底交換
・アッパー補強
問題の音なりも解決。
レザー主体の構成にしたので大人っぽい雰囲気になりました。
ロングシャフトに大振りなタッセル、サンドカーキのスエードアッパーと実に洒落者な佇まいです。
ボトムも生まれ変わってこれからも長くご愛用くだされば嬉しいです。
YUMA.

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