22年のSSなんかでリバイバルされた70年代ファッション。
ド派手なウェスタンブーツをシックに作り直したモデルなんかを少し前にしばしば見かけました。
とは言え街中でウェスタンブーツを履いている人と遭遇することは稀です。
それぐらいアイテムの存在感が強く独自の個性が顕れます。
たまにアパレルの店員さんが履いてたりしますが高確率でリオスオブメルセデスです。
履きやすい設計とコーディネイトしやすいバランスの良さが人気の理由かしら。
トニーラマ、ルケーシー、そしてリオスがウェスタン御三家と呼ばれたりしています。
しかし90年代のウェスタン特集を読み返すとリオスの名前はほとんど見かけません。
当時の日本では今ほど認知は進んでいなかったようです。
かわりに圧倒的に多かったのが「Jastin」です。
かつてはこのJustinこそ御三家の一翼を担っていたのです。
トゥバグステッチや緻密なインレイの入ったライドブーツはもちろん、顔料仕上げのビビットなローパーブーツなんかも多く作っていました。
あと、ノベルティがやたら多い。キャップとかベルトとか。
今じゃ古着屋やネットオークション界隈で見かけるばかりです。
ウェスタンブーツ全体に言えることかもしれませんけど、素朴でありながら手間のかかった作りとデザインが、今となってはすごく良い雰囲気に感じられます。
今回はそのジャスティンの修理事例紹介です。
ウェスタンブーツの特徴である履き口の切れ込み。
スカラップ(ほたて貝)と呼ばれ、横から見るとほたてのように扇型になっています。
膝の可動を阻害しないための意匠ですが、スカラップにも様々なバリエーションが存在しブーツの個性を左右する重要な要素のひとつです。
経年の乾燥によりこのスカラップが裂けてしまっています。
さらにインレイステッチと繋がり大きく破断が広がっています。
このまま履き続ければどんどん裂けが延長してしまうので革を縫い込み補強します。
ライニングには伸びに強く汗を吸う素上げの牛革を使用します。
見た目の変化を最小限にするため表側からは革を当てないことにしました。
かわりに伸び止めテープを破断部分に補強として仕込んでいます。
あとは亀裂にそってジグ縫いをかけてロックします。
ジーパンのタタキのようなイメージですね。
一見すると荒々しく見えますが、案外補修痕がまぎれやすくチャールズパッチよりも加工感が少なく仕上がります。
特にブーツなんかであれば、むしろ貫禄が出てダメージすらステータスになり得るように思えます。
このぐらいくたびれてからが“ブーツの旬”なんじゃないでしょうか。
YUMA.
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