PARABOOTの中では比較的スマートなルックスで、やや真面目な印象のあるアヴィニョン。
シャンボードやミカエルが、フレンチカジュアルコーデの申し子としてメガトンパンチを繰り出し席巻する中で「パラブーツのくせに綺麗すぎる」という天邪鬼な褒め方をされながらアダルト層からの評価を集めています。
(どっこい本国フランスでは一番人気らしいです)
「綺麗すぎる」と言うのも、アヴィニョンはつま先のセンター縫い割や木型のフォルムに寄り添ったエプロン、そしてパラテックスソールよりもやや薄い”Griff Ⅱ”を搭載しています。
がっしりとした作り込みながら何処と無くドレスの気配がするのは、それらのディテールによってスマートなシルエットを構築しているからなのです。
(平面的な「乗せモカ」仕様。シャンボードの立体的な「拝みモカ」とは印象が随分違う)
実際はタフでありながらスマートな印象を併せ持つアヴィニョンはビジネスシーンで重宝することでしょう。
特に最近はオフィスのカジュアル化が進んでおり、機能性や実用性を高めたPARABOOTはその二面性を存分に発揮しています。
しかし、日常的に使いやすいからこそ傷やスレから逃れられないのも道具としての宿命。綺麗目であろうとカジュアルであろうとそれは変わりません。どんなに所作を気遣っても不測のダメージは突如やってくるものです。
そもそも革靴ならば傷が付くのはむしろ勲章。暮らしの中で愛用し続けている何よりの証明なのですから。
傷も含めた経年変化(いわゆる味)こそが貫禄を生むのです。
ただしフォーマルシーンやドレスシーンでは良くも悪くも見栄えが重要視されます。
荒々しい傷は見る人によって「場に似つかわしくない」と感じさせてしまうでしょう。
程度や関係性次第の要素もありますが晴れ舞台用にコンディションの良いペアを控えさせておくのも有効な一手だと思います。
では傷だらけになった革靴はどうするのか?
答えはシンプルで「傷が似合うスタイリングにする」ことです。
例えばシュワちゃんやスタローンが傷だらけでも全く弱々しく見えません。
むしろサバイバルテイストが増しなおさら屈強に見えます。
または漫画実写化映画もわかりやすい例です。衣装に細かな汚しやクタリ感が反映されていると臨場感が増し、安っぽいコスプレとは一線を画すでしょう。
先ほど革靴の貫禄と言いましたが、もっと言えば傷やシワは説得力に通じるのです。
新品の靴が時として妙にのぺっと見えたりするのは、まだ暮らしが投影されてないからなのです。
履き込むことで暮らしの動きが反映されドラマチックな表情になるのだと私は考えています。
よって、傷が映える演出こそ革靴と付き合っていくプロセスでは重要になってくるのです。
その演出方法は様々あって、磨きや、修理や、コーディネイトなど各々の好きな手段で様々なアプローチが可能です。
さて、それを踏まえた上で今回どのようにして「傷が似合うスタイリング」に変更したか。
ズバリ、ソールの厚みです。
採用したのはVIBRAMトレントソール。かなり厚みのあるユニットソールです。
(ユニットソール:フォアパートとヒールパートが一体になっている構造)
Griff ⅡはPARABOOTの純正ソールの中では若干薄手のタイプでしたが、トレントソールに変更することでパラテックスソールのような「これぞパラブーツ」と言わんばかりのバランスになります。
ソールの厚みが増すと頑健なイメージが強化され、平たく言えばマッチョシルエットになります。
傷やスレもある種の迫力を生む効果を持っているのでスタイリングの方向性が補完されると言う寸法です。
逆にシングルのレザーソールにボリュームダウンすることで「くたびれ系」を演出することも傷を活かすには有効です。
古典や名作の映画に登場するような、古びた雰囲気もまた”傷”との相性がすこぶる良いのです。そっちはまた別の事例にて紹介します。
靴とは道具であると同時に、所有者の憧れや慈しみを注がれる対象になるのもまた事実。
傷や汚れにどうしてもネガティブになってしまいがちですが、あまりにも気にしすぎては満足に履くこともかないません。
気兼ねなく、存分に靴を楽しむためには、時としてダメージも肯定してあげられる余裕も大切なのではないでしょうか。
YUMA.
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