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アイリッシュセッターをスペードソールに?鍵は”リブテープ”にあり【RED WING875】


半円犬タグ期のRW875。

赤みを帯びたその色に、かつての渋カジブームを思い出す世代も多いのではないでしょうか。


(Beforeは撮り損ねていたので「VINTAGE RED WING」から引用)
(Beforeは撮り損ねていたので「VINTAGE RED WING」から引用)


お客様のご要望は、「レザーソールでスペードソールっぽくして欲しい。さらに先芯を抜いて」とのこと。

スペードソールとはかつてアメリカなどで流行した、トランプのスペード柄に似た剣先状シルエットになったソールの意匠です。

もっと俗っぽく”烏賊ソール”とも呼ばれてたり。

※ハーフミッドダブルソールのことをスペードソールという場合もあります。


スペードソールは本来木型からしてスペード型になってるものですので、丸っこいブーツでは思うようにシルエットが出ません。

しかしそのドラマチックな雰囲気をなんとかワークブーツに反映させるべく、各所のバランスに気を配って構築していきます。


では早速仕上げをご覧じろ!

……といきたいところですが、実はこのペアは中底も割れてしまっています。

30年近く経過しているので、そりゃ中底だって割れてきちゃいますよね。


長くなりそうですので、今回の事例は前編後編に分けてご紹介します。


前編では解体~先芯抜き~中底交換まで。



まずは①解体。

底周りのパーツは全て交換するので、アッパーだけにバラしていきます。


中底およびウェルトを外すとライニングにアクセスすることができます。

アッパーとライニングの仮留めを外し先芯を除去します。

これでいわゆる”フラットボックス化”されました。

(黄色っぽいのが先芯)
(黄色っぽいのが先芯)


(先芯を除去した状態)
(先芯を除去した状態)

ここからは今までバラしたパーツを新規作成しながら構築していきます。


まずはソール構成パーツの中でもとても重要な中底(インソール)です。

(残念ながらバッキリ割れています)
(残念ながらバッキリ割れています)

直接木型のDNAを反映させているパーツですので、中底交換は慎重かつ厳密に行う必要があります。

本来なら中底とはアッパーと共に使い続けるモノで、気軽に交換してはいけないパーツだと考えています。


しかし足の汗をダイレクトに受け止め、屈曲と乾燥を繰り返すうちに破断することもままあります。

ましてや30年前のプロダクトであれば相応のダメージが蓄積していることでしょう。

大事な中底とは言え、ここまでくれば交換もやむなし。


高額な予算をかける以上、長期的に安心して履けるようにするのはマストです。



(形状をトレースし、経年で変形した反り上がり分も逆算し成形していきます)
(形状をトレースし、経年で変形した反り上がり分も逆算し成形していきます)

そしてここでワンポイント。

先ほど「中底交換は厳密に行うべき」とご説明したばかりですが、早速その基本ルールを破ります

今回はオーダー内容に合わせひとつ工夫を凝らします。

それは「リブテープの貼り位置の変更する」ことです。


ブログ冒頭で、「スペードソール風に~」とのオーダーに対して、「木型からしてスペード形状になっている必要がある」と言及しました。

しかしリラスト(つり込み直し)しない限り後天的に靴のシルエットを変更することは不可能です。

とは言えソール形状をスペード型にすることで雰囲気を寄せていこう、というのが今回のオーダー。

それを後押しするのが「リブテープ」なのであります。


リブテープとはアッパーとソールを繋いでいるパーツで、ソール内部に潜んでいるため通常目にすることはありません。

ただしソールのエッジシルエットを左右するウェルトは、このリブテープに縫い込まれているので実は靴の設計上とても重要なのです。


中底の外周から4~7mmほどの位置に貼りこまれることの多いリブテープ。

どんなコンセプトの靴なのかにより、仕様は様々変化します。

RED WINGの場合は外周グルリに沿って同じくらいの幅で巻かれています。

しかし今回はスペードソールのくびれを意識し、ウェスト部分だけ若干絞り込んでリブテープを仕込みました。






踏まずの吊り込み位置が奥になるに従い、コバの張り出しも奥まってくれるので、スペードソールのメリハリがつきやすくなります。

もちろんやりすぎるとスクイ縫いやフィッティングに影響が出るので、カスタムでリブテープ設定を変えることは一般的ではありません。やってくれるかはお店ごとに方針が異なるでしょう。




巻き直したリブテープにスクイ縫いをかけました。

土踏まず部分はウェルトが潜って半分くらいしか見えていません。


(覗き込んでみると同じ幅でウェルトが取り付けてあるのがわかりますね)
(覗き込んでみると同じ幅でウェルトが取り付けてあるのがわかりますね)

つまり、本来であれば

「一定幅でウェルトを取り付け、ダシ縫いをかけてから踏まず部分を細く削り込む」ことでスペードソール風にするところ、


「ウェルト取り付け位置をスペードソール風にしておき、ダシ縫いをかける前からシルエットを作る」ことで、さらにスペードソール然としたメリハリをつけることが可能になるのです。



いやー、、、文章にすると複雑ですね笑

ブログ読者にちゃんと伝わっているか、甚だ疑問ですがたとえ能書きはピンとこずとも大丈夫です。

次回出来上がったモノをご覧いただければ、なんとなく理解していただけるはず。

完結編もどうぞお楽しみに。



YUMA.

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