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【SANDERS】スリットがもたらす”恩恵”

トラディショナルな英国スタイルをベースにしながらもミリタリーテイストを強調した佇まいで、往年のファンのみならず若者の支持を獲得し続けているサンダース。

歴史的背景がもたらす機能性とロマンを感じます。


今回当店に持ち込まれたペアはチェルシーブーツにCap toeが搭載されたややワイルドなタイプ。

革違いやソール違いでバリエーション展開されているサンダースの代表モデルです。(写真撮り忘れ)



ビフォーの写真を撮り損ねてしまいましたが、純正はヒール付きのコマンドソールが搭載されていました。

しかしオーナー様としてはやや重く使い勝手が悪かったそうで

「もっと軽くしたい」

とのご相談をいただきました。


ソールカスタムにおいて、靴を軽くする場合は主にふたつのアプローチがあります。


①軽いソールを使う

②パーツ点数を減らす


まず①ですが、とてもシンプルなやり方です。単純により軽い素材を使えばその分減量できます。

ソールにも色々な素材があり、例えば一般的な合成ゴムの60~30%ほどしか重さがないソールもあります。


次に②です。

靴底はたくさんのパーツが集まって構成されています。


・アウトソール

・ミッドソール

・シャンク

・積み上げ(これも枚数によって重さが左右される)

・トップリフト

・固定用の鉄釘(本数が集まるとたかが釘もバカにならない)

……などなど。


ざっと書き出してもこんなにあります。

ひとつ一つは大したことなくても、これらが集まれば”重さ”として響いてきます。

フォーミュラカーやスペースシャトルがネジの一本まで軽量化するほどのレベルとはいきませんが、地道にパーツ点数を減らしていくことも結果に寄与する重要な要素。


純正コマンドソールの場合、独立したヒールパートを固定するための部品がかさんでしまうため、フルフラットの船底型ソールを用いるのが有効。


・アウトソール(必要)

・ミッドソール(必要)

・シャンク(不要)

・積み上げ(不要)

・トップリフト(不要)

・固定用の鉄釘(不要)


底縫いをかけるミッドソールさえ組み上げてしまえばアウトソールと接着するだけですので釘の類は使いません。

さらにソール本体には「ヌスミ」と呼ばれる肉抜き穴も開いているため、一段ずつ積んでいく革積みヒールより軽量に組むことが可能です。


(この穴ぼこを”盗み”って表現するあたり、シャレた符牒だよね)


しかも船底タイプであれば土踏まずの荷重をアウトソールが直接受け止めるので、シャンクも省略することができるのです。

(このシャンクが結構重い。鉄から木製に替えることでも軽くできる)



ただ船底ソールの場合、靴にカジュアル感やレトロフューチャーみをもたらすので、良くも悪くもスタイリングの印象をガラリと変えてしまいます。

ヒール付きの”クラシックな革靴らしさ”とはまるで毛色が異なるのです。


今回は「むしろカジュアル感を増したい」とのことで船底ソールを採用!(後から知ったんですがサンダースのミリタリーチェルシーは純正で船底積んでる仕様もあるんですね。じゃあそっち買えばいいじゃん!とならないのは続きを読むとわかります)



(VIB9105を搭載し生まれ変わった姿)


いくつか候補を比較しVIB9105に決定しました。

VIB9105はVIBRAMの中でもかなり軽量な『Vi-Lite』というコンパウンド(配合レシピ)を採用しています。


軽いだけなら安価なスポンジソールでも同じこと、、、と思うかもしれませんが、『Vi-Lite』は耐久性も兼ね備えているため、「軽いソールはすぐに減る」という旧来のイメージを覆してくれます。

ズバリVIBRAM社の本気を感じるスーパーコンパウンドなのであります。


デメリットは「高い」

価格的ハードルによって導入に踏み切れない修理屋さんが多いのも頷けます。

ただ高品質でありますので費用対効果はきっと実感していただけるはず。


VIB9105の特徴はコンパウンドだけではありません。

ソール形状に注目すると分かりますが、細いスリット(切れ目)が入っています。

このスリットのおかげでぶ厚い船底ソールにも屈曲性がもたらされます。



(スリットが動きに合わせて開閉し、動きを阻害しない構造になっている)


このギミックは面白いですよね。

マニアックなこだわりソールを採用できるのもカスタムの醍醐味です。




軽さはもちろん、足運びもフレックス。

スニーカー感覚で履けるチェルシーブーツになりました。


YUMA.



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