今回はGUIDIのホールカットスリッポンの革破れを修理しました。

(イタリアはトスカーナ、老舗タンナーでありつつ自社のシューズも製作するGUIDI社。オイルを豊富に使用したフルベジタンや、タンブラーダイ(製品組み立て後に後染めする手法)などを駆使し、革の表情あるいはモノの表情に深みを与える事で熱狂的なファンを獲得しています。)
新品でありながら、すでにクタっとした脱力感が効いたプロダクトです。しかしその雰囲気を出すためなのか、型崩れを防ぐ”芯材”が全く入っていません。
試着段階で靴べらを使わなかったのか、履き口に負荷がかかりステッチに沿って革が破れてしまっています。
そのため店頭ではB品として販売されていたそうです。


確かに破れてはいるものの、構造はシンプルなためしっかり補強すれば問題なく着用できます。
補強方法は様々ありますが、大雑把に分けると以下の2パターン
①表と裏から革を当て補強する
②裏からのみ革を当て補強する
もちろん①の方が強度がでます。
しかし見た目の変化(補修痕)が目立ちやすい事と硬くなりがちなことがデメリット。。。
②は逆に強度はやや劣るものの、自然な仕上がりに近づきます。
今回は「ホールカットデザイン(継ぎ目のない)であることと、クタっとしたコンセプトがこのペアの最大の魅力だな」と思ったので②をご提案いたしました。
靴べらを使って丁寧に履けば十分耐えられる強度も確保できるでしょう。
では早速取り掛かりましょう。
まずは破れ部分を解体していきます。
唯一の縫い目であるバックシームを解体し革を貼る準備をします。

次に芯テープを貼っていきます。
革だけでも効果はありますが今回は裏からのみ当てる方法ですので、剛性を増してくれる芯テープがあることで効果が高まります。硬くならないように最低限の範囲で。

(布でできたテープみたいな感じで、革製品にはしばしば使われています)
続きましてGUIDIの革を加工します。今回はカーフを使用します。そのままでは厚すぎるので薄く漉いて使います。ここで調整しないとボコっとしてしまい足あたりが悪くなります。

(内側の見えない部分であってもGUIDI製品にはGUIDIレザーを使って修理したい)
最後の革を本体に貼って縫い込みます。
余った革をトリミングしてバックシームを戻したら完成です。




今回はU字状に革を切り出し、平行にステッチを重ねることにしました。
U字状の革をグルリと囲むようにステッチをかけると、いかにも補修しました感が出て視覚的なノイズとなる気がします。
もちろん新品状態には戻らないにせよ、せめて「愛せる修理痕」にできたらいいな。って気持ちで作業してます。
なんならGUIDIなんて傷だらけがカッコイイわけですよ。乾燥肌を気にしてるケンシロウとかラオウとか見たくないでしょ?
傷やダメージも「イイね、箔がついたな」くらいに受け止めてくれたら精神衛生がいいと思います。

どれくらいの範囲に革を当てるか?
どんなふうにステッチをかけるか?
ここはダメージ具合とスタイリング次第で変わってくるので、悩みつつも考えるのが楽しいポイントです。
YUMA.
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