この姿を見れば、どれだけ愛用し履きこまれてきたか、言葉がなくても伝わることでしょう。
お友達にfans.を紹介してもらいご来店されたとのこと。
口コミありがたし。
さて、今回は擦り切れた穴を革でふさぐ修理方法をご提案しました。
・つなぎ目をゼロ漉き(革厚を薄く削ぐ)する事で当てた革がボコつかない
・耐摩耗性が生地より高い
・可塑性(形状記憶力)があるので履き皺部分でもよく馴染む
生地のアッパーであっても革で部分補修するメリットがこんなに。
(イタリアの有名タンナー『グィディ』。タンニン鞣しで独特の風合いが魅力)
使用した革はGUIDIの”チャコール”です。緑がかったダークグレーで、GUIDIらしいニュアンスを感じさせます。
しかもラフアウト(床面の表出し)にする事で色味と質感がよりニアリーに。
気分的にもGUIDIのブーツならGUIDIの革で直したいですよね。
それでは直していきましょう。
まずは補強革パーツを準備します。
破れよりひとまわり大きくカット。この時円形にすると負荷が分散されるので剥がれや破断を抑制します。
(当てる革は外周を薄くして段差が出ないよう加工しておく)
(ほつれた織り込みはボンドで固め、それ以上広がらないようにする)
当て込んだ革と穴ぼこに対しステッチを縦横に走らせる事でジーンズのタタキ修理のような強度をだすことができます。
糸色はあえてグレーにしました。
黒だと色味が重すぎて履き込んだアッパーに馴染みません。あえてグレーにする事で、ここから汚れてきた時うまくコントラストが馴染んでくる狙いがあります。
表側から革を当てる通称「チャールズパッチ」のが知名度ありますが、個人的には今回のようなタタキ修理が大好きです。
しばしば、人やモノに限らず大きな傷がついた時に「箔が付いたね」なんて言いますが、傷やその補修痕がその存在を一気にドラマチックにしてくれる気がします。
使い捨て当たり前の社会の中で、「コスパ」「タイパ」といった価値観が席巻する時代。
お金で面倒ごとをスキップし、”出来合いの暮らし”を享受することも確かに便利でしょう。
それでも、愛用の靴を直したりしながら暮らしに自分の気配を投影していく事で、結果的に”味のある人生”を歩める気がします。
いささか大仰な言い回しかもしれませんが、タタキ修理とはパーソナルな存在感と魅力をもたらすものです。
YUMA.
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