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【聖人ローマンとガルグイユ伝説】

(引用:The Legend Of Saint Romain & The Dragon, In Rouen)


序章


彼の者は、岩漿の沼地から飛来せし。

彼の者は、人馬を蹴散らし乙女を喰らう。

彼の者は、吐き出す瀑布で町を沈める。

彼の者は、首ながの竜にして暴虐の禍いなり。

彼の名は、忌むべくして偉大なる”Gargouille”。



第一章


中世ヨーロッパの町ルーアン(現代のフランス・ブルゴーニュ近辺)の近くにガルグイユと呼ばれる竜が棲みついていた。

ガルグイユは女や家畜を喰い荒らし、立ち向かう男たちを踏みにじった。

白鳥のように長い首を振りかざし、一たび口を開けば一夜で町が流れるほどの大洪水を吐き出したという。


教区の名高い司教・聖ローマンは町に降りかかる惨劇から救う手立てを常に思案していた。

やがて、その強大かつ残忍な脅威に対し直接対決をもって決着をつけるべく動き出す。

まずは竜退治の加勢を得るべく聖ローマンは監獄へ向かう。

腕っぷし自慢の荒くれ者を味方につけようというのだ。

しかしどんなに恐れ知らずのならず者でも”ガルグイユ”の名を聞けば震え上がる。

かろうじてたった一人名乗りをあげたのは挑戦的な死刑囚だった。


「私を連れて行け。首つり台よりは楽しめそうだ。」


聖ローマンは死刑囚に自由を与えるよう訴えたが獄卒はそれを許さなかった。

両の手枷を鎖で繋がれたまま死刑囚は司教の従者となった。

二人は竜の棲家へと赴くのであった。



第二章


一行の眼前に広がる沼地からは肉と渋の臭いが漂ってくる。それに比すれば犬の餌ですら上等に思えるだろう。

ゴボリゴボリとあぶくが弾ける水面のすぐ下には巨大な竜が眠る。

聖ローマンは神の祝福を受けた十字架を掲げた。

すると眩い閃光が竜を貫き、驚いた竜は慌てて仰け反った。

その隙を見逃さず死刑囚は己を繋ぐ長い鎖を竜の長い首に巻きつけ締め上げた。

さらに聖ローマンが再び十字架の光線を浴びせ竜の動きを封じ込める。

死刑囚は竜の背に飛び乗り、鎖を手綱がわりにルーアン目指して曳きまわした。

こうしてついに憎き竜を屈服させたのであった。



第三章


竜を捕縛し凱旋する聖ローマンと死刑囚。

英雄として迎えられた二人は群衆が集う広場へと誘われる。

時の為政者・ダゴベール王によりその場で恩赦を与えられた死刑囚は、死を待つばかりの罪人から一転、「竜御者」の勇名を馳せる事となる。

捕らえられた竜はほどなくして薪をくべられ、火あぶりにかけられる。

衆人環視の中業火が竜の身を焼き尽くす。

だが不思議なことに鎖で締め上げられた長い首より上は焦げ痕ひとつなくそっくり焼け残ってしまった。

これを「神の思し召し」と受け取ったダゴベール王は焼け残った首を担いで大聖堂教会の壁面に飾った。

竜の首は”聖遺物”として崇められ邪を払う存在としてその建物を守護することを期待されたのである。



終章


かつての悪竜伝説にちなみ、後世ではとある建築様式が流行する。

”グロテスク(奇怪なる者)”と呼ばれる、竜や悪魔を象った石像を建築壁面にあしらう趣向だ。

醜くいかめしい姿でもって、邪なる存在を追い払う聖域の番人。

もちろんそれらは単なる装飾にとどまらない。

多くは実用的な雨どいの役割を担い、もっぱら口を模したパイプから排水する機構を持っている。

重力を活かし、棟の壁面から斜め下にせり出させた意匠が特徴で、あたかも長い首を伸ばして水を吐き出す”ガルグイユ”を想起させる。

現代では「ガーゴイル」という名で広く認知され歴史家から建築マニアまで多くの人々を魅了する。




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高く伸びたバックステイから前下がりに伸びるサイドバンプ。

鱗を想起させる密集連続したアイレット。

波打つ濁流のようにうねる革の皺。

今宵、新たな”モンスター”が誕生する。


彼の名は、忌むべくして偉大なる『Gargouille』……





YUMA.



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